補聴言語学科News

「笑顔の授業」

失語症当事者の池田博之さんは、ご自身の失語症の体験をお話しすることで、社会的に広く失語症の理解を深め、失語症があっても生活しやすい社会を実現したいという思いから、「笑顔の授業」という講演を復職後のお仕事として精力的に行っておられます。

今年も本学院で「笑顔の授業」を行ってくださいました。

池田さんは、失語症によりコミュニケーションが困難になったときのご様子やリハビリテーションを受けて職場復帰する経過などについて、ご自身の経験を具体的にご説明してくださりました。

「入院中、初めてトイレに行ったときに困ったことはなんだってしょうか?」などといったクイズ形式での質問も取り入れてくださり、学生と交流を大切に講演をしてくださいました。

池田さんのお話をお聴きして、回復への強い意志、活力、あきらめない気持ち、家族や友人、職場などの周囲のサポートが、回復には重要であることを学ばせていただきましたね。

後半はグループディスカッションを行いました。

「池田さんがスーパーで日用品や食材を買うときに困ることは何でしょうか?」

「池田さんが友人と食事に行きたいと考えました。どんなことに困るでしょうか?」

など、日常のコミュニケーション場面で困ることをグループで考えて発表し、学生からの質問一つ一つに丁寧にお答えくださりいました。

また、失語症の方とのコミュニケーションのコツについても、

「ゆっくり話してくれた方が理解しやすい」

「文字や絵、写真があった方がわかりやすい」

「身振り手振りがとても役に立つ」

実体験を基にしてたくさん教えてくださりました。

また、社会の多くの人に失語症やそのコミュニケーション支援の方法が浸透して、失語症とともい安心して生活できる社会づくりを行うことが必要であることもお話ししてくださり、我々STの役割や責任は大きいと痛感しました。

学生たちは、貴重な池田さんのご意見を逃さないように熱心にメモを取っていました。

我々にとって、失語症の評価や訓練を学ぶことは重要です。失語症の方に関わることが我々の仕事です。しかし「失語症の人」ではなく「一人の人間」という全人的な視点や心のふれあいが、大前提としてとても大切であることを、この「笑顔の授業」から楽しく学ばせていただきました。

笑顔溢れる「笑顔の授業」をありがとうございました。