義肢装具学科News
2年生は下腿義足Ⅰ(実習)にて、PTB式下腿義足の製作実習に取り組んでいます。
前回のレポート(2年生 下腿義足の陽性モデル修正を行いました。)では、採型実習の様子をレポートしました。
今回は、学生自身が採型した陽性モデルの修正を行いましたのでその様子をレポートします!
PTB式下腿義足の陽性モデル修正
今回製作するPTB式下腿義足は、断端を挿入するソケットの形式がPTBソケットというものになります。
PTBソケットは、1950年年代にアメリカのカリフォルニア大学生体力学研究所で、機能解剖学的および生体力学的な観点から開発されました。下腿義足で初めて体重支持理論とアライメント理論が導入されたソケットで、現在でも下腿義足ソケットの基本となっています。
体重支持理論は、義足を装着して、体重を支えながら安定的に歩行するために重要であり、この理論を達成するためにPTBソケットの陽性モデル修正では、厳密に削り修正部位と盛り修正部位が区分けされています。
PTBソケットの盛り修正
PTBソケットでは、主に下記の部位に盛り修正を行います。
- 脛骨粗面
- 脛骨外側顆前面突起部
- 脛骨稜
- 脛骨骨端
- 腓骨頭
- 腓骨骨端
- 断端末
- ハムストリングスの走路
盛り修正の位置と量が適切でないと、義足を装着して荷重した際に痛みが発生する原因になります。
陽性モデルに石膏を盛り付け、硬化後にヤスリで削って形を整えます。盛り付ける量が少なければ痛みに、多ければソケットの緩みに繋がるので適切に行いましょう。
ソフトインサートの製作
PTBソケットは、義肢学では二重ソケットに分類されます。二重ソケットとは、その言葉の通り内ソケットと外ソケットの二重構造になっているものです。
義足ソケットは、積層材(ナイロン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維など)に液体プラスチックを含侵させた繊維強化プラスチックでできており、軽量かつ高強度という優れた特徴を持っています。
繊維強化プラスチック製のソケットは硬いため、硬(質)ソケットまたはハードソケットと言われます。この硬ソケットを断端に直接装着すると痛みが生じるため、クッション材として断端の上に装着するのが軟(質)ソケットまたはソフトソケットになります。
軟ソケットは、硬ソケットの内側に装着するため、これをソフトインサートと呼称しています。
ですので、PTBソケットでは、まず断端に断端袋(靴下の役割)を履き、その上からソフトインサートを装着し、さらにその上から硬ソケットを装着する、という装着手順になります。
熱成型
ソフトインサートの素材には、ポリエチレン・フォーム、発泡ゴムなどありますが、今回はポリエチレン・フォームで製作します。
ポリエチレン・フォームは、熱可塑性樹脂なので熱成型ができます。
簡単に製作手順を説明すると、必要な寸法で切り出したポリエチレン・フォームのシート材の両端を貼り合わせて筒状にし、オーブンに入れて軟化させ、陽性モデルに被せます。すると、塑性変形により陽性モデルの形状に固定され、陽性モデルを除去してもその形状が維持される、というわけです。
発泡ゴムは熱硬化性樹脂なので、このような熱成型ができません。そのため、発泡ゴム製のソフトインサートは、ポリエチレン・フォーム製のものと比べると複雑な製作工程となります。ちなみに、発泡ゴム製のソフトインサートは、全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)、義肢部門の正式競技種目となっています。
1年次の義肢装具基本工作論でも同様にポリエチレン・フォーム製のソフトインサートを製作したことがあるので、製作手順は慣れたものだと思います。この実習では、実際に義足ユーザーに装着していただくことになるので、製品を製作しているという意識を持ってモノづくりにあたってくださいね!
次回は、本記事の中でも紹介しました、硬ソケットを製作するソケットラミネーションの様子をレポートします!