義肢装具学科News
2年生は下腿義足Ⅰ(実習)にて、PTB式下腿義足の製作実習に取り組んでいます。
前回のレポート(2年生 ソケットラミネーションを行いました。)では、ソケットラミネーションの様子をレポートしました。
今回は下腿義足のベンチアライメントの様子をレポートします!
義足のアライメント
アライメントという言葉は、義肢装具学上の専門用語ではありませんが、一般的に使われる言葉ではないため、聞き馴染みの無い方が多いと思います。
言葉としてのアライメント(alignment)の意味は、次の通りです。
・位置合わせ、整列、一直線にすること
・ある対象の基準となる位置を相手側のそれに正しく合わせること
weblio英和辞典・和英辞典
意味合い的に直訳が難しいためか、日本ではカタカナ英語としてアライメントと発音、表記しています。一般的には、自動車関係でタイヤアライメントというように使われていますね。
義足におけるアライメントは、足部に対するソケットの相対的位置関係および角度と定義されています。上記のある対象の基準となる位置を相手側のそれに正しく合わせること、という意味が当てはまると思います。
具体的には、
ある対象=ソケット
相手側=足部
ですので、ソケットの基準となる位置を足部のそれ(位置)に正しく合わせること、となります。
このアライメント(足部に対するソケットの相対的位置関係)は、切断者によって異なります。ある義足ユーザーの静止立位における足部に対するソケットの相対的位置および角度は、他の義足ユーザーのそれとは完全には一致しません。
義足のお話しなので義足ユーザーを例にしていますが、これは健常者でも同様です。
例えばこれを読んでいるあなたの静止立位における足部に対する膝関節の位置および角度と、お友達のそれとは完全には一致しません。分かりやすく言うと、立ち姿(姿勢)がヒトそれぞれで異なるからです。
なんとなくイメージができましたか?
足部と膝関節を例に説明しましたが、足部と膝関節以外にも、姿勢には股関節や骨盤、体幹、頭部も含まれるので、実際の立位姿勢はもっと複雑ですね。
ここでは静止立位を例に説明しましたが、当然、歩行時の歩き姿(歩行姿勢)もヒトそれぞれで異なります。
そのため、義足のアライメントをそれを装着する義足ユーザーのアライメントに合わせて調整する必要があります。これが義肢装具士が行うアライメント調整というわけです。
義肢装具士が行うアライメント調整には、3つの段階があります。
- ベンチアライメント
- スタティックアライメント
- ダイナミックアライメント
この3つです。
PTB式下腿義足のベンチアライメント
ベンチアライメントとは、作業台の上で義足を理論通りに組み立てる静的なものをいいます。ですので、この段階ではまだ義足ユーザーは不在で、義足は装着してもらいません。
PTB式下腿義足のベンチアライメントは次の通り。
- 前額面:MPTレベルにおけるソケットの内外側径の二等分点からの垂線(基準線)が足部の踵とtoe-breakの二等分点に一致する。
- 矢状面:MPTレベルにおけるソケットの前後径の二等分点からの垂線(基準線)が足部の踵中心に一致する。
- 水平面:足部の進行方向とソケットの進行方向が一致する。
各観察面においてすべてを満たすことがベンチアライメントの条件になります。
1年次の義肢装具基本工作論でもPTB式下腿義足のベンチアライメントは2回経験経験しており、通算3回目になりますが、「この作業が得意です!」という学生さんは例年おらず、毎回苦労しています。1mmにも満たないほんの僅かな線の曲がり、角度のズレが歪みとなって現れるので、各工程での作業の正確さが問われます。
複数の不規則な形状の物体に手作業で多方向から線を描き、そのすべてを目視で一直線上に組み立てるというモノづくりは他の職種では行われないでしょうし、おそらく専門教育を学んだ義肢装具士にしかできないのではないでしょうか。
苦労しつつもなんとか下腿義足を組み立てることができましたね!
次回はいよいよ、適合実習の様子をレポートします!