2年生 PTB式下腿義足の適合実習が行われました。
2021/07/01
2 年生は4月から、PTB式下腿義足の製作実習に取り組んできました。
この実習では、下腿切断(脛の部分での切断)の方をモデル被験者としてお越しいただき、採寸・採型から製作、ソケット適合、義足調整までを行い、下腿義足の製作・調整理論について学習します。
まずは切断端(切断された部分)の採寸、採型を行います。
採寸や採型は、義足ソケットの適合に影響する重要な工程となります。
義足製作には使用される方とのコミュニケーションがとても重要です。
切断端の評価はもちろん、職業や生活環境、趣味などあらゆる情報が義足製作に反映されます。
ギプス包帯を用いて採型する前に、切断端の骨突起部にマーキングを行います。この工程では、解剖学や運動学の知識が必要不可欠です。
切断端にギプス包帯を巻き終えると、PTBソケット特有の手技を行います。
今回製作するPTBソケットの体重支持原理に関わる工程なので、この手技を正確に行うことがとても重要になります。
この学生は、上手に手技が行えていますね!
採型に引き続き、陽性モデル(石膏モデル)の修正を行います。
PTBソケットでは、体重支持理論に従って陽性モデル修正を行うことで、義足に体重を支える機能を持たせます。
PTBソケットの体重支持理論では、体重を支える部分(荷重部分)と体重を支えない部分(非荷重部分)を明確に区分けします。そのため、切断端の骨の位置や筋の走行などの運動学・解剖学の知識が必要になります。義肢装具士は「勘」や「センス」に頼って義肢装具を製作しているわけではありません。
まず始めに、義足の進行方向を設定します。
この進行方向の設定が義足完成まで重要な基準となるため、正確に行います。
荷重部分は削り修正により「加圧」し、非荷重部分は盛り修正により「除圧」します。
この切断端への加圧と除圧の加減が、ソケット適合に大きく影響します。
次はソフトインサートの製作です。
義足ソケットと切断端の間にはクッション性のある軟性ソケット(ソフトインサート)を装着します。材料には、皮革やスポンジ材など、柔らかい材料を使用して製作されます。
ソケットは硬質のプラスチックで作られるので、そのまま切断端に装着すると痛みがあります。私たちが硬い革靴を裸足で履くと痛みを感じ、いずれ靴ずれになってしまいます。そのため、クッションとして靴下を履くことと同様ですね。
ソフトインサートが完成したら、硬質ソケットの樹脂注型を行います。
次に、いよいよソケットを足部と組合せて、義足として組み立てていきます。
ソケットに引かれている黒色の線を「基準線」といいます。基準線は、歩行中に義足側だけで立った時(立脚中期といいます)に、垂直に立ち上がる線です。義足は、文字通りこの基準線を基準として、義足を組み立てていきます。この工程を「ベンチアライメント」といいます。
ベンチアライメントは、立脚中期の状況を再現するので、基準線は机の上で垂直に立ち上がらなければいけません。
言葉では簡単ですが、立体物を全方向に対して位置および角度を一致させるというのは、なかなか難しいものです。毎年のことですが、学生は四苦八苦しながら取り組んでいました。
これでPTB式下腿義足が完成です!
さあ、ついに実際に装着していただく「適合実習」になりました!
まずは、先生のデモンストレーションです。
完成した義足を装着していただきますが、まだ歩行は行いません。
義足で安全に立位がとれるように足部に対するソケットの相対的な位置・角度を微調整します。この静止立位で行う義足の調整を「スタティックアライメント」といいます。
前後・内外側に不安定感が無く、かつ床面に対して足底が全面設置して立位を保持できるようになったら、次の「ダイナミックアライメント」に移行します。
ダイナミックアライメントでは、実際に歩行していただいたうえで、義足側立脚相で前後・内外側に不安定感が無く歩行できるように義足を調整します。
静止立位の静的(スタティック)に対して、歩行中に行う動的(ダイナミック)なアライメントなので、ダイナミックアライメントといいます。
デモンストレーションを見て、この日までに座学で学習した「下腿義足のアライメント」を一つひとつ確認します。アライメントに異常があるときに、歩行中に現象がみられるのは一瞬です。その一瞬を的確に見極める視点を養いましょう。
いよいよ学生の実践です!
最初は、スタティックアライメントの確認です。
「ソケットがきつい」場合には、そもそも義足を装着することができないので、その時点で「不適合」になってしまいます。臨床的には採型からすべて作り直しです!
まずは、ソケットを装着することができて一安心でしたね!
歩行、観察、調整を繰り返して、適切なアライメントへと近付けてきます。
このダイナミックアライメントでも必要になるのは、「勘」や「センス」ではなく、バイオメカニクスに基づく調整理論です。
採寸・採型から始まり、陽性モデル修正、ソフトインサート製作、ソケットラミネーション、ベンチアライメント、適合まで、初めての経験ばかりで戸惑うこと、悩むことなど、たくさんあったかと思います。ですが、何事も最初からすべて理解できて、うまく出来る人などいません。悩みながら習得したことにこそ意味があると思います。
「PTB式下腿義足を製作できる」という知識と技術は、この学校に入学しなければ身に付けることができなかったはずです。
自信を持ってください!
以上で2年生の臨床実習前の下腿義足(製作実習)は終了です。
臨床実習期間中にPTB式下腿義足に触れる機会があったら、臆することなく積極的に関わらせていただきましょう!!