BLOG - 義肢装具学科

3年生 大腿義足(四辺形ソケット)の製作実習が行われました。

2021/06/18

3年生は4月から大腿義足(四辺形ソケット)の製作実習を行ってきました。

大腿義足の製作実習では、前期と後期にわけて2種類の義足ソケットを製作します。前期は坐骨(ざこつ)で体重を支持する「四辺形ソケット」の採寸・採型、製作、適合までの工程を学習します。

 

まずは、切断端の「採型」を行います。

採型は、製作における工程のひとつではありますが、実際に義肢装具を使用する方と話をして情報収集を行う、大切なコミュニケーションの場面でもあります。

 

大腿義足の採型は切断者に健側肢で立位をとってもらいながら行います。

切断者の身体的、心理的な負担を考慮しながら、限られた時間の中ですべての段階を正確に行うことが大切です!

 

採型実習に引き続き、陽性モデル修正を行いました。

 

大腿義足では、採型時に採寸した切断端の周径値をもとにコンプレッション値を設定していきます。

コンプレッション値は、断端長や皮下組織の厚さによって数値を決定します。

 

大腿義足ソケットの陽性モデル修正ではミリ単位の誤差がソケットの適合に大きく影響します。

陽性モデル修正では周径調整と同時に、筋の走路や骨形状を理解していないと適合の良いソケット形状を形作ることはできません。

 

陽性モデル修正が完了したら、次は「チェックソケット」を製作します。

 

チェックソケットとは、適合状態をチェックするために透明な材料で製作する仮のソケットのことをいいます。

 

採寸値を基に、磨き上げた陽性モデルはまるで陶器のようです。

 

オーブンで熱し、軟化させたプラスチック材料を陽性モデルの形状に沿わせ、チェックソケットを製作します。

この作業工程を「モールド成型」といいます。

 

プラスチックを陽性モデルから取り外し、切断者の方が快適に装着できるよう上縁をキレイに整え、チェックソケットとして仕上げていきます。

 

チェックソケットが出来上がりました!

次は、チェックソケットを膝継手、足部と接続し、いよいよ大腿義足として組み立てる「ベンチアライメン」の工程に移ります。

 

義足適合までには、3つの調整段階があります。

 

まず、基準となるアライメントを決定する「ベンチアライメント」。

この段階は机上での作業であり、まだ切断者は義足を装着しません。

 

次に、歩行を行う前段階として静止立位におけるアライメントが適切か、安全な試歩行が行えるか確認するための「スタティックアライメント」。

ここで切断者は実際に義足を装着しますが、静止立位であり、まだ歩行をしてもらう訳ではありません。

 

ここまでのアライメント調整が完了したところで、実際に義足で歩行してもらい、歩行状態でのアライメントを決定する「ダイナミックアライメント」に移行します。

安定的かつ健側とのバランスが整った歩容が得られたところで、調整終了となります。

 

スタティック、ダイナミックアライメントの基準となるベンチアライメントを組み立てます。

 

歩行中、健側が床面から離れ、義足側だけで体重を支えて真っすぐに立つ瞬間を「立脚中期」と言います。この立脚中期に、床面に対して垂直になる線を「基準線」といい、文字通りこれが義足を組み立てる上での基準となります。

ベンチアライメントでは、この基準線が床面に対して垂直かつ膝継手、足部の規定の位置を通過する必要があります。

 

4月初めから製作してきた大腿義足(四辺形)もベンチアライメントまで完成し、いよいよ適合実習を迎えました。

 

実際にモデル被験者に装着していただき、まずはソケットの適合状態をチェックします。

局所的に圧迫している個所や、反対に切断端から浮き上がっているところなどがないかチェックしていきます。

出来上がったソケットの形状は、陽性モデルの形状を反映しています。

従って、なぜその箇所が不適合となったのか、陽性モデル修正まで振り返って検討することが重要となります。

採型から始まっている1つ1つの正確な作業の積み重ねが、良い適合につながるということを忘れずに!

 

続いて、スタティックアライメントを調整します。

静止立位で前後内外側に不安定感が無く、安定して立位姿勢がとれるように調整していきます。

 

ほんの数ミリ、数度のズレが、装着される方にとっては大きな違和感となり得るため、義肢装具士には慎重な調整が求められます。

 

試行錯誤を繰り返し、納得のいくスタティックアライメントが得られたようですね!

 

最後にダイナミックアライメント調整を行います。

義足の調整はトライアンドエラーの繰り返しです。調整のたびに歩行を評価し、異常があればその修正を行い、理想のアライメントへと近付けていきます。

 

4月から始まった大腿義足(四辺形ソケット)の製作実習はこれで終了となります。座学で製作理論を学び、実習でそれを実践したことで、より理解が深まったと思います。

 

後期からは「坐骨収納型ソケット」の製作実習が始まるので、しっかり復習しておきましょう!

3年生

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