先輩メッセージ ~海外で活躍する義肢装具士~ vol.1
2021/07/12
本校の義肢装具学科を卒業後、海外の義肢製作会社で活躍している先輩がいます。
この記事では、オーストラリアで義肢装具士として働く、大谷 洋史 さん(義肢装具学科 第16期生)からの先輩メッセージを紹介します。
オーストラリア ブリスベンの義肢製作会社に勤務する
大谷 洋史 さん(義肢装具学科 第16期生)
◆現在の職場について教えてください。
現在はオーストラリアのブリスベンという町にある、民間の義肢装具製作会社に勤務しています。
会社の規模としては中小企業の大きさで、義肢装具士が8人、義肢装具製作技術者が5人働いています。
職場の仲間と
◆職場での現在の業務内容について具体的に教えてください。
現在、私は下肢装具の製作に携わっています。
現在の会社に勤務する前はアデレードという町にある小児病院で7年間、義肢装具士として勤務していました。
現在はその経験を活かして、小児用装具の製作にも携わっています。
また、現在の会社では下肢装具以外にも赤ちゃんの頭を丸い形状に整えるヘルメットを提供しており、そのヘルメットの製作も私が担当しています。
赤ちゃんの頭を丸い形状に整えるヘルメット
◆オーストラリアの義肢装具士資格について教えてください。
オーストラリアの義肢装具士の資格は日本のように国家試験を受けて取得するものではありません。
オーストラリアには現在2つの大学に義肢装具専攻科があります。
メルボルンにあるラ・トローブ大学(修士課程)とクイーンズランド州にあるサンシャインコースト大学(学士課程)です。
この大学の義肢装具専攻科を卒業することでオーストラリアの義肢装具士の資格を得られます。
オーストラリアではオーストラリア義肢装具協会(AOPA)に加入することができ、学会や勉強会、就職募集などの情報を調べることができます。
義肢装具士の業務内容は、日本とオーストラリアでそれほど違いはありません。
医師やコメディカルスタッフと情報交換をし、クライアントが望む義肢装具の製作と適合を行います。
ただ、日本とオーストラリアの大きな違いは、病院の役割と民間の義肢装具製作会社の役割が明確に分かれている点です。
オーストラリアの州立病院などには義肢装具科のワークショップが病院内に設けられています。
そして、そこでは義足であれば訓練用(練習用)の義足までが製作され、この義足を使って歩行ができるようになると、日常用に使用する義足の製作が民間の義肢装具会社に依頼されます。
病院で取り扱う義肢装具は訓練用までで、そこから先の製作は民間企業の業務となります。
また、日本とオーストラリアの義肢装具士の環境で違うところがいくつかあります。
日本の義肢装具士は5,000名を超えていますが、オーストラリアは約400名しかいません。
日本とオーストラリアの人口比率で考えると差は生じますが、オーストラリアの義肢装具士はまだまだ不足しています。
そして、男女比もオーストラリアでは過半数以上が女性の義肢装具士です。
今回の記事はここまでです!
日本とオーストラリアの義肢装具士に関わる資格制度の違いについて紹介してもらいました。
日本の義肢装具士数は5,887名(2021年4月現在)です。
オーストラリアの人口は約2,500万人で、日本の人口の約6分の1であることを踏まえても、オーストラリアの義肢装具士数が約400名というのは、とても少ない印象ですね。
とはいえ、日本の義肢装具士数も、理学療法士(192,327名)や作業療法士(99,700名)などの他の医療専門職と比較すると、まだまだ少ないというのが現状です。
男女比についても、オーストラリアでは過半数以上が女性ということでした。
日本の義肢装具士の男女比については、一般社団法人 日本義肢装具士協会が2016年に行った義肢装具士の実態調査によると、男性84%、女性16%という結果が出ています(有効回答数1,385件)。
オーストラリアと日本、男女比でも大きな違いがありますね。
次回vol.2では、大谷さんの学生時代について、在校生のみなさんへのメッセージ、これから義肢装具士を目指すみなさんへのメッセージをご紹介します!