義肢装具士養成校初『スポーツ用義足の製作実習』が行われました!
2020/02/14
今年いよいよパラリンピックイヤーを迎え、様々なメディアを通してスポーツ用義足を装着するパラアスリートを目にする機会が増えてきました。
そのため、「スポーツ用義足を知っていますか?」という質問に、「知っている!」「見たことがある!」という方も多いと思いますが、では「スポーツ用義足を誰が製作しているか知っていますか?」と聞かれると、知らない方も多いのではないでしょうか。
実は、スポーツ用義足は義肢装具士が製作しています!
専門学校日本聴能言語福祉学院 義肢装具学科では、2019年度より全国の義肢装具士養成校に先駆けて、『スポーツ用義足の製作実習』をスタートしました!
本年度行われた製作実習の様子をレポートします!
※スポーツ用義足とは?
通常の歩行の範囲を超えた運動となる“走る・跳ぶ”ことに特化し、ジョギング程度の軽いスポーツから、パラリンピックに代表される本格的な陸上競技まで、幅広く対応できる義足を総称してスポーツ用義足といいます。
ちなみに、日常生活などで歩行を目的として使用する義足を常用義足といいます。
2年生の前期までに常用義足については既に学習を終えていますが、スポーツ用義足は初めての経験です。
“歩行”と“走行”では義足使用の目的も異なるため、スポーツ用義足を構成するパーツも常用義足とは全く異なります。
ソケットを製作し足部の取り付け位置を決める工程です。
位置や角度の調整は後からでも可能ですが、調整範囲に限度があるため初期設定位置がとても重要になります。
学生同士で試行錯誤しながら、最適な位置を探しています。
※スポーツ用足部とは
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で作られており、切断者が義足に体重をかけることで足部がしなり、反発力をエネルギーとして蓄えます。このしなりが戻るときに蓄えたエネルギーが放出され、走行や跳躍をすることが可能となります。
反発力を蓄え、放出するといったバネの作用を持つことから、スポーツ用足部は通称“板バネ”とも呼ばれています。
今回使用する足部“LAPOC SP1100 KATANA”の設定位置です。
スポーツ用義足の分野はまだ理論的に確立されていない部分が多く、臨床現場でも義肢装具士が試行錯誤しながら製作しているのが現状です。
この製作実習を通して学生たちがスポーツ用義足に興味を持ち、さらに深い学びに繋げて行くことを期待しています。
足部の取り付け位置が決まったようですね!
この後、専用のコネクタをパテで固定し、真空樹脂注型(ラミネーション)を行い、ソケットを仕上げて完成です。
常用義足ではソケットのカラーは肌色が一般的ですが、今回はスポーツ用らしく、学生が思い思いのカラーに仕上げました!
ソケットを着色する方法や、Tシャツの柄を利用する方法など、カラフルなソケットを製作する方法についても学習しました。
最近は義足を隠さず、そのまま見せる形で生活をされている方も増えるなど、義足使用者の意識も変化してきています。
そのため、常用義足でも“かっこいい”とか“かわいい”模様やデザインが求められるようになってきました。
「スポーツ用義足が作りたくて義肢装具士を目指しました!」という学生は、お気に入りの布地を使ってソケットを製作しました。
スポーツ用義足という特別な義足を製作したことから、いつも以上に自分の製作物に愛着が湧いたようですね。
使用者のためにも、その気持ちをいつまでも忘れずにいてくださいね!
今回のスポーツ用義足の製作実習をスタートするにあたり、義足パーツメーカーの 株式会社今仙技術研究所 の皆様にご協力をいただきました。誠にありがとうございました。
次回は、いよいよ製作したスポーツ用義足による走行の様子をレポートします!