川村義肢株式会社から小畑祐介先生(本学科7期卒業)と藤田晋吾先生(車椅子・シーティング課)にご来校いただき、「座位保持装置」および「車椅子」について特別講義をしていただきました。 座位保持装置とは、疾患により四肢、体幹の変形、姿勢異常がみられ、座位がとれない患者様に対し、変形の予防や日常生活動作の改善を目的とし使用する補装具です。義肢装具士が取り扱う補装具のなかでも、より専門性が求められる分野でもあり、臨床で常にこの分野を担当されている先生方のお話はとても貴重です。 藤田先生には座位保持装置について、基礎知識から製作技術についてご講義いただきました。 「姿勢とは?」から始まり、「身体重心」「脳性麻痺」など運動学、機能解剖学、リハビリテーション医学などで学んだ専門用語が次々と出てきますが、3年生ともなるとそれぞれの意味を理解しながら楽しく講義を聞いていたようです。 小畑先生は車椅子を中心に、子供用から成人用、特殊な機構を持つもの、電動車椅子など、さまざまなタイプの車椅子とその適応について分かり易くご講義いただきました。車椅子と言っても、必要とする患者様の状態によってたくさんの選択肢があることを理解できたのではないでしょうか。 続いて、座位保持装置の製作について学びます。座位保持装置の製作方法として、身体各部の寸法を計測する採寸による方法と、適切な座位を再現したうえで身体の型をとる採型による方法があります。今回は写真の専用採型台を用いた採型方法について実習を行いました。 採型に使用する機材の準備をします。患者様の負担を減らすためにも、事前準備がとても大切であることを藤田先生から繰り返しお話いただきました。 準備ができたら患者様の事前評価を行います。変形や麻痺の程度を把握しながら、どのように患者様の姿勢を作っていくか、また、採型者が完成品をどれだけイメージできているかが重要であることを教えていただきました。 事前評価を基に、専用採型台を用いて患者様を安定性良く、かつ楽に座れる姿勢を再現していきます。常に患者様の状態を見ながら素早く作業を進めることが大切ですね! 採型を終えたクッションです。しっかりと身体の形状が再現されています。 続いて、ギプスを使ってこのクッションの採型を行います。そして得られたギプスモデルを三次元スキャナでパソコンに読み込ませ、CAD/CAMを用いてスポンジ等の切削加工を行います。 藤田先生に教えていただいたことを踏まえ、いざ、実践です! 夢中になり過ぎて患者様の状態を確認することを忘れないようにしましょうね! 続いて、小畑先生から車椅子について実際に試乗しながら説明をしていただきました。講義のために大阪(大東市)からたくさんの車椅子を持って来ていただきました。 車椅子の構造を理解したら、次は利用者の視点に立って実際に路上を試乗してみましょう! 日本の道路は水はけを良くするために、中央が盛り上がった“片流れ路”になっています。車椅子を真っ直ぐ操作しているつもりでも、なかなか直進できませんね。車椅子利用者の本当の不便さを理解することが、何よりも勉強です! 歩道の走行にも気を使います。何気なく駐輪してある自転車も、立場が変わると思いがけないバリアになってしまいますね。 駅のエレベーターや発券機は、車椅子を利用している方でも手が届く位置にボタンが配置されています。 この自動販売機はどうでしょうか・・・ 車椅子の介助を体験中。車椅子使用者だけでなく、介助者の視点を学ぶことで見えてくることが大きく変わります。常に双方の視点を忘れずに、モノづくりをして下さいね! 2日間にわたって座位保持装置、車椅子を徹底的にご講義いただきました。 とても内容の濃い2日間に、学生たちには国家試験勉強の合間の良い刺激となったようです。最後までとても熱心にご指導いただきました小畑先生、藤田先生ありがとうございました。
教務室から, 義肢装具学科