2011年01月22日

苦い思い出-言語聴覚士専門学校教員のつぶやき(23)-

現在、教員室では論文執筆や学会発表の準備を各々の教員が進めており、活気にあふれています。

ところで、そんな時や授業準備のふとした時に甦る苦い記憶があります。

私事で至極恐縮ですが、
出産前に長期安静にする必要があったため、
出産後は「廃用症候群」とも言うべき状態で、
身体機能が衰え、階段を上ることや走ることもできませんでした。
当然、職場に復帰しても通常の業務で精一杯で、
しばらく学会発表はおろか、学会に参加することさえもできませんでした。

しばらくたち、あせる気持ちもあってようやく参加した研究会で、
知り合いの先生から「現在アメリカで多用されている専門書を翻訳出版したいので、是非メンバーに加わってほしい」と誘われました。
自分の専門領域では、
参考にすべき専門書が少ないとかねてより感じていたので、
それは願ってもない話でした。

しかし・・・当時の私は、
慣れない子育てと仕事の両立で体力的に限界で、
大阪で開催された研究会に参加するのさえ、
散々悩んだのです。
とても本の出版に携われる状態ではないとお断りしました。

そして翌年、その本は出版されました。
想像以上に素晴らしい出来でした。
講義準備や論文執筆の際などにも、何度となく読み返します。
その度ごとに「本当にあの時、話を断って正解だったのか?
頑張ろうと思えばできたのではないか?」
との苦い思いにしばらく囚われます。
本はまた出版できるかもしれませんが、
この本に関わることはもうできないのです。

今でもどちらが良かったのか、分かりません。
でも若い学生や卒業生達が
「その時にしかできない仕事(勉強)」を手にしないで後悔だけはしてほしくないと強く感じています。

p.JPG
聴能教員P

日本聴能言語福祉学院 NEWS TOP 日本聴能言語福祉学院 TOP